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「血吸いの妖刀・ダインスレイフ、お前の出番だ」
アルマが手にした刀を、私は見たことも聞いたこともなかった。
刀身は、この世にこれ以上赤いものなど存在しないという程に赤く、非常に禍々しい気を放っている。
恐らく"魔剣"の類に属するものなので、聖剣図鑑には載っていなかったのだろう。
「これは血を吸えば吸うほどに斬れ味を増す妖刀。今までに何百もの魔族を斬ってきた刃なら、お前の鎧のような羽毛でも斬れるはずだ」
「成程。ならば、試してやろう!」
鳥人の女王は翼を大きく振るい、無数の羽をアルマ目掛けて矢のように飛ばした。
「この刀を抜いたからには、短期決戦あるのみ……」
アルマは目にも止まらぬ速さで妖刀を振るい、放たれた全ての羽を斬り刻んでゆく……
どうやら妖刀ダインスレイフの斬れ味は女王の言う"並"さえも遥かに凌いでいるようだ。
「この刀は持つ者を狂気に駆り立てる血に飢えた魔剣。私でも長時間は柄を握っていられない」
アルマは勝負を急ぐように一気に間合いを詰めるが、女王は聖騎士の鎧をも砕く強力無比な脚技で迎え撃とうとする。
「気をつけて、アルマ!」
しかし、私の声が耳に届いていないのか、アルマは飛んでくる蹴りに衝突する勢いで突っ込んで行った。
「死ねぇっ!」
女王の鋭い爪が空を裂く。しかし、アルマの姿は一瞬のうちに消えてしまい、どこにも見当たらなくなった。
まさか、あまりの破壊力に身が砕け散ってしまったというのだろうか?
「消えた?この距離から避けたというのか?どこだ……」
敵の反応を見るに、どうやら攻撃は空振りだったようだ。だとしたら、アルマは一体どこへ行ってしまったというのだろうか?
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