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「ふん、血吸いの妖刀などというのはハッタリで、怖気付いて逃げたのだろう。さて、そこの痩せた小娘から食ってやろう」
鳥人の女王は鋭い爪を地面に食い込ませながら一歩ずつ接近してくる。
「隙だらけだよ?」
「何っ?」
襲われる……そう思った瞬間、どこかへ消えていたアルマが女王の背後から急に現れ、赤い刃で左翼を斬り落とした。
「不意打ちは好きじゃないけど、今はできるだけ早く決着をつけたくてね」
「おのれぇ!」
アルマは女王が振り返りざまに放った回し蹴りを跳んで回避すると、今度は右側の翼を斬り落とす。
「さて、ダインスレイフ。そろそろとどめを刺させてくれるね?」
「刀とお喋りだと?ふざけているのかっ!」
もはや蹴りしか攻撃手段のなくなった女王は、大地を蹴って高く跳び上がり、アルマを頭上から巨大な両足で踏み潰そうとする。
「死ねぇっ!」
巻き起こる衝撃波。アルマが立っていた場所は大きく地面が抉り取られたが、彼の姿は再び見えない。
「これで終わりだ」
全体重をかけた攻撃を躱されて反動で隙だらけになった女王は、何もなかった真正面の空間に急に出現したアルマによって脳天から体を真っ二つにされてしまった。
「あ……」
断末魔の叫びを上げる間もなく、女王は絶命して地面に激しく倒れ込む。
「アルマ、勝ったのね!」
「ふう、こんな強敵とは久々に戦ったよ」
血を寄せつけない霊刀とは対照的な血に染められた禍々しい妖刀を素早く鞘に納めるアルマ。
私は嬉しくなって、傷だらけの彼に駆け寄り抱きついた。
「まさか、ぽっと出の君に負けるなんてね。でも、納得の強さだ」
広い空間に微かに響く拍手の音。戦いの最中もずっと倒れたまま動けなかった彼は、辛うじて動く両手を使ってアルマを祝福し始めた。
「ルナお嬢様のこと、頼みましたよ」
まだこのお題が最終ではないけれど、彼はアルマに対して完全に敗北を認めているようだ。
他の花婿候補たちも悉く脱落したし、確かに今最も有力なのはアルマに違いない。
けれど、何でだろう? アルマのことは好きだし、格好良いとも思うけれど……
「……お前ら、勝った気になるのは早いぞ?」
その時、冷たく突き刺すような鋭い声が響き渡った。
気配のする方を見ると、一刀両断されたはずの鳥人の女王が無傷でそこに立っていた。
「滅多刺しにしてやる」
女王は斬られたはずの翼を振るい、無数の羽根を飛ばしてくる。アルマは私を庇い、それらを背中に受けて傷を負ってしまった。
「そうか……輝石の聖杯で不死身になったんだな?」
「ああ。妾を倒す術などもはや存在しない。ここで散るがいい」
アルマの問いに答え、不死身の女王は不気味に微笑んだ。
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