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「いくら斬っても倒せないなら、ここは逃げるしかない!」
アルマは傷だらけの体で私の手を引いて逃げようとしたが、女王は空に向かって飛び上がり、私たちの前に回り込んで出口を塞ぐように着地した。
「帰りたければ、命を置いて逝け」
終わった。この絶望的な状況から生還する方法なんてあるはずもない。
「ルナ!」
迫り来る死の運命に茫然と立ち尽くす私の首に、細くひんやりとした感覚がぶら下がった。
「これは、ネックレス?」
アルマは自分の首につけていた剣の飾りのネックレスを外すと、私の身につけてきた。
そして、顔を耳に近づけてメッセージを囁いてくる……死の間際のプロポーズだろうか?
「よく聞いて。こいつはネックレスを装った剣だ。鞘から抜いたら出口に向かって止まらず走り続けるんだ。外に出るまで絶対に手放しちゃだめだよ」
「え?」
「いいから早く」
私は言われるがまま、ネックレスについた小さな剣を鞘から抜いた。
すると、一瞬にして急激に体が軽くなったように感じ、周囲のあらゆるものが巨大化してゆく……
「うそ? 何これ」
指先で摘んでいたはずの剣は、いつの間にか丁度良いサイズになって手に握られており、私は自分の体が小さくなってしまったことを理解した。
これは聖剣図鑑に載っている世界最小の聖剣、小人の剣だ。
「今度は小娘のほうが消えただと?一体どういう仕掛けなんだ」
「彼女は魔法を使って逃がした。ここにはもういない。さあ、私が相手だ」
敵は私が縮んだことに気付いておらず、消えたと思っているようだ。
小人の剣には手にした者の体を衣服やその他の装備品ごと小人サイズにしてしまう力があり、手放したり鞘に納めると元の大きさに戻る。
アルマが戦いの最中に姿を消していたのも、この剣の力を使っていたのだろう。
これで、私はこの危機的状況から生還することができる。
私は剣を持ったまま女王の股の下を潜り抜け、出口へ向かって突っ走った。
いつもの姿なら数歩で辿り着ける距離でも、小人の姿だと何十歩もかかってしまう。
けれども、この剣には足を速くする効果も備わっているようで、遠くに見えていた天井のある長いトンネル部分へと差し掛かるのはあっという間だった。
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