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彼が諦めたとしても、私はまだ諦めたくない。
神よ。もし、本当に居るのなら私たちを助けてーー
目を閉じて祈りを捧げる。私は神様なんて信じる人間じゃないけれど、もはやそれ以外の方法なんて考えられなかった。
「今こそ我が力を示す時……」
すると、私の藁にもすがる思いが届いたのか、何者かの声が頭の中に響いた。神の声だろうか?
いや、その気配は天高くから語りかけてくるであろう神なんかよりもとても身近に感じられる。
小さくなった体の骨の髄にまで響くこの振動……アルマはきっと気付いていない。それは彼の背中から伝わってきている。
「ねえ、アルマ。私、やっとわかったわ」
そうだ。昔図鑑で読んだ内容をやっと思い出した。聖剣ローズマリーゴールドが持つ本当の力を。
「剣の聲を聞いて。あなたならできるでしょう?」
「ルナ?一体何を……」
「私には聞こえたわ。聖女の囁きが」
アルマは瞼を閉じ、瞑想を始めた。そして、その身に帯びた大剣の柄に手をかける……
「ルナ、君には参ったよ。今まで敵に"刀の聲を全然聞いていない"だとか偉そうなことを言ってたけど、私だって独り善がりに刀剣たちのことを理解したつもりになっているだけだった。聖女様は私に対してこんなにも語りかけてくれていたのにね。気付かせてくれて、ありがとう」
そう言った彼の横顔は、いつものように自信に満ち溢れていた。
「剣の聲?そんなものが聞こえたところで何になる。死ね!」
鳥人の女王は無数の羽根を飛ばしてくるが、それらはアルマが鞘から抜いて振るった聖剣に触れた瞬間灰となって空気中に散った。
「何だ?今のは……」
「お前には今から、この羽根と同じ運命を辿ってもらうよ?」
「たかが別の剣に持ち替えたくらいで妾を倒せるとでもいうのか?小癪な……その腑、引き裂いてやる!」
鳥人の女王は血眼になりながらその巨体で私たち目掛けて飛びかかってくる。
「終わりだ、女王様」
アルマは最初と同様に女王の体を脳天から両断した。
すると、不死身だった肉体は忽ち灰となって霧散していく……
聖女が遺した大剣・ローズマリーゴルドの真の力ーーそれは、生死の理に背く不死身の存在・アンデッドを浄化する聖なる力だったのだ。
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