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「やった……私たちの勝利ね!」
「ふう、流石に今回はもう駄目かと思ったけど、ルナのお陰で挽回できたよ」
私は歓喜してアルマの首筋に抱きついた。
「まさかあの怪物を倒してしまうなんて……君は本当に凄い男だよ。この秘宝は君に相応しい」
つい先程まで重傷で動けなかったはずのエンビは、手にした暗算石を渡そうとアルマへと歩み寄ってきた。
どうやらアルマが女王の肩を斬った際に飛び出した石は運良く彼の元へ転がっていったらしく、それを拾ったお陰で歩けるようになったらしい。
「どうやら、手中に収めてもすぐには女王みたいに怪物化しないみたいだね」
アルマは手を出し、暗算石をエンビから受け取ろうとする……
その時、上空から鳥人とは違った羽ばたき音が大きく響いてきた。
「何だ?」
「足元の影を見て!かなり大きいわ……」
「この音には聞き覚えがある。間違いない、こいつは"竜"だ!」
頭上から感じる風圧は次第に強くなっていき、見上げれば舞い降りてくる刺々しい巨体の怪物の姿が見えるーー
プラムが倒したと聞いていたけれど実際は生きていて、私たちが進む森を火の海へと変えたその忌まわしき怪物は、鋭い爪を地面に食い込ませると同時に高らかに咆哮を上げた。
背中には、暗算石を巡る争いに一切姿を見せなかった"あの男"が立っている。
「君は、確か花婿候補の一人の……」
「プラム殿か?まさか、倒した竜を配下にしていたなんて」
プラムはライバルたちの意外そうな反応を見て鼻で笑う。
「ピーチ様が私の配下?ご冗談を。配下になったのは私の方だ」
仮面を外すと、焼け爛れたと聞いていた右半身は竜と同じ深紅の鱗で覆われており、失ったはずの右眼は黄色く光っていた。
彼は竜に鱗を植え付けられ、その下僕たる存在・竜人になっていたのだ。
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