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「鳥人の女王討伐、ご苦労様。お陰であとはお前たちさえ皆殺しにすれば暗算石は私のもの。都へ持ち帰れば、晴れてこの私がルナの婿となれる」
竜人と化したプラムは竜の背の上で高らかに笑い声をあげる。
彼は最初から、ライバルたちに鳥人を討伐させ、疲弊しきったところへ現れて暗算石を強奪するつもりだったのだろう。
そして、どこかで道草でも食っていたのか戦況の一部始終までは把握していないようで、小さくなっている私の存在にはまるで気が付いていない。
「貴方はなぜ人であることを捨ててまでルナお嬢様の花婿になりたがるんだ? それとも、主となったその竜の意思なのか?」
「それを知ってどうする? 知ったところでどうせ灰となって死ぬだけではないか」
もし竜に身を捧げてまでも私の花婿になりたかったのだとしたら?
それだけ私を愛してくれていたのだとしたら?
けれども、私たちが死闘を繰り広げているのを知っていながら一切姿を見せず、今更になって現れるような卑怯者は絶対に許せない。
「ねえ、君たち。さっきの戦いが終わるまで隠れてたってことは、鳥人の女王よりも弱いんだろ? よく見たらその竜なんて成体の半分くらいの大きさしかないお子様じゃないか」
急に挑発的な態度で煽り始めるアルマ。
竜はまだ子どもらしいが、それでも人間を4人ほど背に乗せられるくらいには大きく、私の体が小さくなっていることを抜きにしても十分迫力を感じられるサイズだ。
「人間風情が……我が主の力、侮るなよ?」
アルマに対して怒りを露わにする竜と、その心を代弁するプラム。
「ピーチ様、あなたの力を示すのです」
言われなくてもわかっているというような目つきで、竜は大きな口を開けて燃え盛る炎の吐息を放出してくる。
しかし、霊刀ドルフレーゲンを持つアルマに対してそんな攻撃は無意味だ。
彼は炎を左手に持った霊刀の一太刀で消し去ると、右手に握った血吸いの妖刀で竜の首へ斬りかかる。
「残念だけど、疲れてるんでね。瞬殺させてもらうよ」
赤く染まった刃は竜の急所を直撃した……かに思えたが、全身を覆う鱗はとてつもなく硬く、あの鳥人の女王の羽毛をも斬り裂いたダインスレイフでも傷一つつけられなかった。
「そんな……竜の鱗を斬れるようになるにはまだ血が足りないってことなのか?」
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