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振り返れば、生まれ育ったティグリスの都が小さく見える。無心でひたすら歩き続けたけれど、大分遠くまで来てしまったものだ。
初めての旅立ちはアルマがいてくれたから心強かったけれど、一人ぼっちの旅路は少し風が吹いただけでも心に堪えるものがある。
誰にも頼れない。私自身でなんとかするしかない。
「ひっ!」
足元の地面が何だか少し動いたような気がした。
「き、気のせいよね……」
少し盛り上がった土を見なかったことにして私は進む。きっとミミズやモグラの仕業に違いない。
「きゃっ!」
今度は鋭く尖った爪のようなものが地表に空いた穴から見えた。
「なんだ、やっぱりモグラじゃない……」
「モグラだと?」
長い爪の持ち主は穴から顔を出すと勢いよく地上に飛び出してきた。
しかも、1体だけじゃなく3体もいる。
「そんな下等動物と一緒にするな。俺たちは地底生活に特化した獣人型魔族・土竜人だっ! 覚えとけよ?」
彼らは人間のような体型をしているけど、モグラのように長い鼻の先には髭が生えていて、全身も細かい体毛で覆われていた。
こんな毛深い連中に捕まってしまうなんて、本当に不運だ。
「前に荒野を歩いてた時は出て来なかったくせに、なんでこんな1人の時に限って……」
「そりゃあそうだ。前はあのクソ強剣士がいたから手を出せなかったのさ」
「若い娘の肉にありつくのは久しぶりで涎が止まらないぜ」
彼らは私を三方向から取り囲むと、爪研ぎをしながらじわじわと距離を縮めてくる。
このままだと八つ裂きにして食べられてしまう!
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