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アルマはプラムたちを追って先へ行っている。アベストスだけでは何体もいる土竜人たちに太刀打ちできない。ブランシュは投獄中で、エンビはもういない。
「ピエールは?」
「あいつなら鳥人の巣から回収した輝石の聖杯を元居た神殿に返しに行ったよ! 守るべきものを奪われた挙句にアンデッドを生んでしまう失態……今回の件で懲りてもう旅は辞めるそうだ」
「そんな……」
完全に"詰み"だ。私を助けてくれる可能性のある人物はこれでもう1人も残っていない……
ふと下を向くと、自らの腰に帯びている古びた剣が視界に入った。
「いやいやいやいや、私ってば何考えてんのよっ!」
私はまた誰かに助けてもらうことを期待して、自分で道を切り開くという選択肢を無意識のうちに除外してしまっていた。
受け身だらけの生き方を変えるって誓った筈なのに。
「アルマの剣、私に力を貸してっ!」
彼の剣だから、抜けばきっと何かが起こるはずだ。期待を込めて私は鞘からそれを引き抜いた。
「……って、普通の剣?」
アベストスは弱音を吐きながらも私を守ろうと流血しながら戦ってくれているけれど、そろそろ限界が近そうだ。
そして、私の剣の腕前はモグラ男一匹倒すことすら難しいレベルだ。
「タダで死んでたまるかっ! こうなったらヤケクソよ」
無抵抗で殺されてしまうのは嫌だから、私は使い古されたような地味だけど味のある彼の剣を思い切り振り上げた。
「あれ……?」
そのつもりが、気がつくと私は剣を横に薙ぎ払っていて、瞬時に3体の土竜人たちを一撃で仕留めていた。
これが火事場の馬鹿力というやつだろうか?
その後も私は剣を無心に振り回そうとしたけれど、右に振ったつもりが前方への鋭い突きになっていたり、振り上げたつもりが振り下ろしていたりと意思に反して体が勝手に動き、次々と敵を葬っていった。
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