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さっきは運良く躱せたけれど、今度の火球は大きさも速さも増していてとても避けられそうにない。
「危ないっ!」
周囲の岩に反響する聞き覚えのある明るい声。突如現れた人影が放つ一閃によって、直撃するかというところで火球は真っ二つに割れて消滅し、私たちの命は助かった。
「アルマ!」
タイミングよく姿を見せた彼は水の霊刀ドルフレーゲンを右手に握っていたが、その他に所持している剣は見たことのないものへと変わっている。
そして、その後ろには霊剣サラマンダイトを背負ったプラムが立っていた。
「プラム、早くそいつを殺して!」
ピーチは再開したしもべに命令を下すが、彼は従う様子もなくまるで味方のようにアルマの背後から動かない。
「残念だったね。彼は私の仲間へと寝返ったのさ。だから霊剣サラマンダイトはこっちのものだ」
「馬鹿な! 竜人となった者の主への絶対服従は揺るぎのないもののはずよ! 裏切ったフリはやめてとっととやっちゃいなさい」
「……」
ピーチが何と言おうと、プラムは虚ろな目をして不動のまま佇むばかりで、一言も発することはない。
「プラムなら水の霊刀で発生させた霧で君と引き離した後、この"振り子の剣"で催眠状態にしてある。彼の意識が眠っているうちに君を倒して元の人間に戻してやるのさ」
アルマは小人の剣の代わりに首から下げたペンダント型の禍々しい魔剣を指で触りながらにこりと微笑んだ。
「ええいっ、催眠術に惑わされるような弱いしもべなんて要らないわ! こうなったら皆殺しにしてやる」
ピーチは不完全な竜玉に触れると、溢れ出る炎のようなオーラに包まれて竜の姿へと変化した。
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