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「欠けた竜玉じゃあこの姿でいられるのも僅かな時間だけど、雑魚どもを一掃するには十分よ」
燃えるような熱い吐息を口から漏らしながら、竜と化したピーチは殺気に満ちた声を岩場に響き渡らせた。
「丁度いい。彼にかけた催眠状態だって時間制限があるし、ここは短期決戦といこうか」
竜化したピーチに勝つ秘策でもあるのか、アルマは余裕の笑みを絶やさない。
「炎が来たら私が斬る! みんな私の後ろへ」
アベストスと私は促されるままにアルマの後ろへと回った。催眠状態とはいえ、裏切り者のプラムと肩を並べて立つのは何とも複雑な心境だったけれど、今はそんなことを気にしていられる状況じゃない。
「一箇所に纏まってくれるなんて好都合ね。灰も残らないくらいに燃え尽きてしまいなさい!」
こっちにはアルマの霊刀ドルフレーゲンという無効化手段があるにも関わらず、懲りずに炎を吐き出してくるピーチ。
アルマは消火をしようと霊刀を構えたが、その目の前で炎は急に軌道を曲げて頭上へと昇っていき、アーチを描いて私たちの背後へと着弾するとそのまま地面を焦がしながらこちらへと向かってきた。
まさか、炎をここまで自在に操ることができるなんて……
そのスピードは尋常じゃなく、アルマの速さでも対応できそうにない。
「任せたよ、プラム」
「……」
間近に迫る灼熱の炎。それを受け止めたのは、プラムが持つ炎を纏った霊剣サラマンダイトだった。
「炎に対抗し得る剣は水の霊刀だけじゃない。炎で炎を相殺することだってできる」
アルマが炎の霊剣をプラムに持たせたままだったのは、この場合を想定してのことだったのだ。
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