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でも、その確信は淡い希望的観測に過ぎなかった。
ピーチが尻尾から血を流しながら後退し、爆発音のような激しい咆哮を上げると、それまで何の気配も感じなかった岩陰から無数の人影が現れて私たちを取り囲んだ。
「見て、顔や腕に鱗が!」
「あいつら、プラムと同じじゃないか」
現れたのはピーチによって鱗を移植され、精神と肉体を支配された竜人たちだった。
「竜王族がしもべにして一度に操ることができるのは一人だけじゃないわ。でも、あなたの催眠はどうかしら?」
「くっ……」
催眠術にかけられる人数に制限がないならば、ピーチ相手にもとっくにかけていたはずだ。つまり、プラムを操っている今、アルマはこれ以上催眠術が使えないということになる。
竜人たちは剣や斧を持って襲いかかってくるけれど、彼らは元々人間で、さっきのアルマの口ぶりだとピーチを倒せば元の姿に戻れるようだ。
そんな彼らと戦うことに躊躇していると、アルマは私に檄を飛ばしてきた。
「ルナ、自分の身を守ることだけを考えて!
その剣の斬れ味なら硬い鱗を持つ彼らを殺してしまう心配なんてないから!」
「あ、ありがとう」
彼の言葉に安心して鞘から"導師の剣"を抜くと、まるで剣術を教えてくれるかのごとく剣が私の脳の代わりに四肢へと指令を出し、襲い来る敵たちをの攻撃を次々と捌いていった。
私の殺したくないという意図を汲んでか、導師の剣は土竜人たちと戦った時よりも防御寄りの立ち回りで、攻撃の際も敢えて鱗に覆われていない急所を外しながら戦ってくれている。
周りを見回す余裕も出てきて視線を動かすと、アベストスとプラムもそれぞれ剣を武器に戦っていた。
そして、アルマは敵の親玉であるピーチを追い詰めようと迫るものの、竜人たちを盾にされて攻めるに攻められないでいた。
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