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「ルナお嬢様、大変です! 至急広間までいらして下さい」
使用人のひどく慌てた声に目が覚める早朝。
霊剣サラマンダイト奪還の旅を終えて3日が過ぎ、私はいつもの生活に戻っていた。
あの日、父は帰還した私たちを暖かく迎えてくれて、竜のしもべとなっていたプラムたちのことも責めたりはしなかった。
プラムは家宝サラマンダイトを父に返すと、贖罪のために私たち親子の前に二度と姿を見せないことを自ら誓い、都を出て行ってしまった。
その他の竜人にされていた者たちも都から元いた場所へと帰って行き、ほれぞれの生活に戻った。
アベストスは結婚よりも己の男としての器をもっと磨くことが優先だとして舞台役者としての本業に戻り、早速忙しい日々を過ごしていると聞く。
そして、旅の剣士アルマこと刀剣蒐集家のビアンカは、父より炎の霊剣サラマンダイトを授けられて旅に出た。
私たちの手元にあれば再び竜のような手に負えない強大な敵に狙われる恐れがあるからビアンカが持っていた方がいいーーそれが彼女に向けた父の言葉だった。
実際は、私の旅に出たいという我儘を聞いて、さらに魔族との戦いで命を守ってくれたことへの報酬という意味合いも強かったのかもしれない。
「また会うのを楽しみにしてるわ」
ビアンカが旅立つ際に残してくれた言葉は、今も強く深く心に刻まれている。
後々彼女を知る人たちから聞いた情報によると、刀剣のコレクションは命よりも大事で絶対に手放さないらしいが、私の手元にはあの時譲り受けた導師の剣が残されていた。
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