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頭にぼんやりと霞をかけたようにまとわりついていたアルコールが、全て身体を火照らせる熱に変換されていくような気がして。
「恥ずか、しい……ですっ」
それならば自由な手で隠せばいいと思うのに、私の脳内には未だ「隠さないで」と告げられた緒川さんからの言葉がまるで見えない楔のように残っていて、両手を顔横で貼り付けていた。
それでも何とか自分を鼓舞してノロノロと腕を上げると、躊躇いがちに胸のふくらみのすぐ下――鳩尾のあたりで所在なく両手を重ねる。
本当は隠したいのはそこじゃない。
日頃は下着に守られている胸と下腹部。
だけどそこを隠してしまうことはいけないことだと、緒川さんの視線が物語っているようで、どうしても隠せなくて。
羞恥心に、緒川さんをまともに見詰め返すことが出来なくて、でも動いてはいけないと何故か思っているから身体の向きを変えることもできない。
せめてもの抵抗に、一生懸命顔を横向けて伏し目がちに視線を合わせずにつぶやいたら、ふっと柔らかく吐息を落とす気配がした。
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