*転職を機に

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 なおちゃんは、奥さんには家族としての情のみで、男女としての恋愛感情はないって言うけれど、それはなおちゃんの一方的な言葉に過ぎないって私、分かっているの。  なおちゃんにそのつもりがないからと言って、奥さんも彼に対して恋愛感情がないとは限らない。  そう気付いていながら、そこからあえて目をそらすように妻帯者と一緒にいるんだもの。  私だって、十分に罪深い。  それに――。  なおちゃんだって私の前ではそんな風に言っているけれど、家に帰ったら奥さんに「愛してるよ」ってささやいてるかも知れないもの。  そういう諸々を百も承知で、気付かないふりをして自分の気持ちも誤魔化して。  それだけならまだしも、あわよくばなおちゃんの奥さんの座におさまることができないかしらと夢見てしまうことさえあるのだ。  あえて見ないようにしているけれど、それはなおちゃんの家庭を壊すことなくしては起こり得ない、最低な望み。
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