消えない印

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菜乃香(なのか)、週末は一緒に買い物へ行かないか?」  引越し先は近場だからと、大きなものだけ父に軽トラで先に運んでもらっておいて、細々としたものはマイカーに少しずつ積んでは段階的に引っ越しを済ませた。  その段ボールが粗方片付いて、やっと一息つけるかなと思えるようになった頃。  なおちゃんがそう言って私の髪をすいた。  私が一人暮らしを始めてからは、なおちゃんの借りている市役所傍の駐車場まで私が車で出向いて、なおちゃんを乗せてアパートへ帰って。  そこで2人で2時間ぐらい過ごしてから、また同じように駐車場まで彼を送って行ってさよならをする。  そんなサイクルを繰り返すようになっていた。  情事は専ら私の部屋。  場所はベッドだったり、リビングの床の上だったり台所だったりお風呂場だったり。  今日はベッドで(むつ)み合ったのだけれど、エアコンが効き始めるのを待てずに始めてしまったからか、私にしては珍しく身体がしっとりと汗ばんでしまって。  蝶を模したバレッタでハーフアップにしていた髪の毛は、なおちゃんがキスをしながらいつの間にか外していた。
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