消えない印

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*** 「菜乃香(なのか)はピアス、興味ないの?」  キュッと爪先で耳朶を挟まれて、私は「なおちゃん、痛い」って彼の手に触れる。 「興味……なくはないけど……少し怖いの」  穴を開けるのも、開けた後も。  言ったら、「俺、菜乃香(なのか)の耳にピアスの穴、開けたい」ってなおちゃんがつぶやいて。 「え?」  思わずその声に彼の方を見つめたら、耳たぶに触れられながらキスをされた。 「んっ」  口の中を掻き回すように舐められて、意識がそちらへいきかけるたび、耳をギュッと挟まれて。 「や、っ」  鈍い痛みに小さく吐息が漏れる。 「キスマークはさ……」  唇から首筋に降りてきたなおちゃんの口付けが、髪の毛で隠れるであろうギリギリのラインにチュッと吸い付いて赤い鬱血の跡を刻んだ。  そうしながらも、耳をいじる手は離してくれなくて。  何度もなおちゃんに力強く挟まれた耳たぶはジンジンとした疼痛と熱っぽさを訴えている。 「どんなに頑張って付けても……数日経ったら消えちゃうだろ?」  それでもなおちゃんから付けられたアザは、消え切る前に次のものを散らされるから、私の肌はずっとどこかしらに赤い花びらが舞い飛んでいるの。 「ん。だからなおちゃん、毎日新しいのつける、の?」  左の鎖骨のあたりにチクッとした痛みを感じて、そこにも新たなアザが刻まれたことを知る。
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