消えない印

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「そう。これは菜乃香(なのか)は俺のものって印だからね」  消えないようにしないといけないのだ、となおちゃんが微笑んだ。  なおちゃんはとっても独占欲が強い。  言動の端々にそれを感じさせられることが、怖いのと同時に心地よくもあって。  私は全身全霊でこの人に支配されたいのだと思ってしまう。 「だから、さ。ちょっとやそっとじゃ消えない印を俺は菜乃香(なのか)の体に刻み込みたいんだ」  いつのまにか耳元に移動していた唇で、耳朶をそっと()むようにした後、一瞬だけそこに噛みつかれた。 「いっ!」  指で挟まれた時とは比べ物にならない痛みがピリッと耳に走って、私は思わず涙目で悲鳴を上げた。 「ねぇ、菜乃香(なのか)。俺にピアスの穴、開けさせて? 俺はね、もしキミと別れることになったとしても、菜乃香(なのか)が俺を忘れられないよう、一生消えない痕跡を菜乃香(なのか)の身体に刻みたいんだ」  ジンジンと痛む耳たぶをやんわり舐め上げながら、なおちゃんが私にそう強請(ねだ)る。  彼に支配されたいとそう願ってしまう私には、なおちゃんからの要求を断ることは出来ないの。  私はなおちゃんをじっと見上げて小さくコクン、とうなずいた。
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