*斜め上からの独占欲

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 今選んでくれたのだけで既に万札が1枚飛んでいく金額なの、値札を見たから知ってる。 「俺からのプレゼントだから、菜乃香(なのか)は値段なんて気にしなくていいんだよ?」  なおちゃんはそう言って私の髪をかき上げる様にして、ピアッサーに付属していた太い軸のピアス?にそっと触れると、 「ずっとこんな可愛くないので我慢してたんだ。今からはたくさん気に入ったのに付け替えて楽しむといい」  ってささやくの。  いつもより低められた声を耳元に吹き込まれた私は、つい条件反射で身体がブワッと熱くなって慌ててしまう。  こんなところで変な気持ちになるのは良くない。  一生懸命理性をかき集めてなおちゃんと繋いだ手をギュッと握ると「じゃあ、あとひとつだけ……自分で買う」ってつぶやいた。  途端なおちゃんにグイッと腰を引き寄せられて、「菜乃香(なのか)にピアスを贈るのはね、俺のものってマーキングも兼ねてるから……自分で買うとか許さないよ?」って真顔で言われて。  私はその声にゾクリと背筋を撫でられた気がして、思わず「分かった」ってうなずいていた。  なおちゃんの独占欲。  たまに予期せぬ方向から責めてくるから――。  私、すごくすごく戸惑っちゃうんだよ?
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