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うちにはゴーストライターがいる。
といっても、作家の影武者という意味ではなく、本当の本物のゴーストライター。つまり幽霊さんが小説を書いている。
つい半年ほど前に買った破格の中古パソコン。機種も古くなくパソコン自体もまだ真新しいそれは、正規の価格なら10万近くする。それが、たったの1万ぽっきり。
ちょうどパソコンを買い替えようと思っていたオレは、なにを疑うこともなくそのパソコンを買ったわけなんだけれど……どうやら曰く付きだったらしい。パソコンを買って三ヶ月が過ぎる頃、夜中にキーボードを叩く音で目が覚めた。
電源をおとしたはずのパソコンが煌々と光り、真っ白な画面に文字が次々と打ち込まれていく。驚いてベッドから転がり落ち、床を這って電源ボタンを押したけれどパソコンは終了しなかった。
カタカタ
カタタタッ
カタカタカタタタ
永遠に続くキーボード音。
一瞬、電源を引っこ抜いてしまおうかとも思ったが、どす黒い執念のようなものを感じ断念した。
オレにとりついているわけではなく、きっとパソコンに宿る霊なのだ。だからオレがなにもしなければきっとなにも起こらない。多少、睡眠不足になる程度で殺されたりはしないだろう――そう思い、オレは買ったばかりのパソコンを幽霊さんに譲ることにした。
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