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翌日、フミと一緒に登校する。マンションを出てすぐにフミが心配そうに顔を覗き込んだ。
「昨日の記憶がないんだけどさ……。私仁美の家に行ったよね?」
「うん」
「その後、仁美の部屋で作戦会議して、トイレに行って……」
「うん」
「そこから記憶がないんだけど。気が付いたら私の部屋で目覚めて、朝になってた」
フミが一連の不可解な現象に首を捻っている。
「結局、あの後ドッペルゲンガーは現れた? 大丈夫だった? 無事なのは、まあ分かるけど、手に包帯してるし」
「落ち着いて、落ち着いて。いっぺんに質問されても答えられないよ」
包帯でグルグルになった痛む右手を上下させ、遮った。傷口にはガーゼを貼り、それを抑えるように包帯が巻かれている。見た目は痛々しいが、傷口はほとんど塞がっているが、手を使う動作をすると痛み、不便だ。
「この通り無事。そしてドッペルゲンガー問題は解決しました。ちょっと代償を払ったけどね」
「代償って……。その右手?」
フミが同情するような視線を右手に向ける。
「後は、脇腹」
制服をちらりと上に持ち上げ、脇腹に張られた大きなガーゼを見せた。こちらは右手と違い、今も少し血が滲んでいる。
「うわ……痛そう。本当に大丈夫なの?」
フミが顔をしかめ、心配そうに聞いた。
「大丈夫だよ、もう心配いらない。今日からまたデートが出来るよ」
「デートって……」
フミが顔を赤らめ、少し嬉しそうに言った。
「これからよろしくね、フミ」
そう言って仁美は微笑んだ。
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