最後の一通

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「ずっと一緒にいようね」 君が最後に言った言葉だったね。 「叶翔さん、今日もお疲れ様」 僕の妻、西條すみれが言った。 「うん、ありがとう」 こんな冴えない会社員だが、彼女がいるだけで世界が美しく観える。 「おやすみなさい」 「うん、おやすみ」 「いってらっしゃい」 「いってきます」 こんな些細な会話が大好きだった。 こんな会話を最後にしてから一年たった。 彼女はもう死んだ。 癌を患っていたのだ、なんで僕に言ってくれなかったのか、多分彼女はとても優しいから心配をかけたくなかったのだろう。 なんでだよ。 ずっと一緒にいようって言ったじゃないか。 なんでだよ。 今日は彼女の命日だからか、気持ちが高ぶっているのか。 落ち着かなくては、 彼女が大好きだったアイリスの花を持って彼女のお墓のもとへ向かった。 「あっ…」 彼女の両親が先に花束を持ってお参りしていたのだ。 「こんにちは」 彼女の両親と挨拶を交わした。 そのあと彼女の前で手を合わせ心の中でつぶやいた。 すみれ、君がいなくなってから一年たったな。今でも君を忘れられないよ。ほんとは生きてるって言ってくれよ。 帰ろうとしたときもう彼女の両親は帰っていた。 「なんだこれ」 帰ったとき玄関のドアノブにビニール袋が掛かっていた。 中を見てみると、一通の手紙とメモ紙が入っていた。 メモには すみれから私が死んで1年経ってから貴方に渡してと言われていました。 と書かれていた。 すみれの両親からだった。 手紙は中に入っていたゆっくり観ようと思った。 叶翔さんへ この手紙を見てるってことは私は死んでからもう一年経ったってことかな 叶翔さん約束守れなくてごめんね。 ずっと一緒にいようって言ったのは私なのに、ねぇ叶翔さん私の分も沢山生きて、生きて、生きてそして私のところに逢いに来てね。 今の世界を愛して、眩しいくらい輝く太陽もうるさいくらい鳴いている虫の声もそして沢山の人達の笑顔と泣き顔とすべてを愛してね。 僕は泣くことしか出来なかった。 すみれ、、すみれ、 僕、君の分まで沢山生きてやるよ。 あと100年だって生きてやる。 いつも君に助けられて来たな。 ありがとう。 そしてさようなら。
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