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窓の外にゆるやかに電車が駆けていく音が、鼓膜を揺らす。音が止みきった頃合いを見計らって、わたしはしずかに目を開けた。枕に埋もれた視界半分は真っ暗で、あとの半分はカーテンの向こうにある外の光を少しばかり透過させて、暗闇を灰色に染めている。
この部屋は、窓から顔を出せばすぐのところに線路が見えた。だから毎日終電とともに眠りにつき、始発とともに目を覚ます。と言えれば格好がよかったのだけれど、実際はベッドの中に潜り込んで電車の音を聴いていても、いつのまにかその音は遠ざかって、気づけば眠りについていることが多い。反対に、なかなか寝付けずに終電まで電車の音を聴き届ける夜もあった。
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