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諦めてむくりと身体を起こし、ベッドの上で壁に背中を預けて体育座りになる。そして、枕元に伏せてあったスマートフォンを手に取った。手の中で光る長方形のブルーライトが、不躾に顔をなぶって照らす。眩しさに目を眇めながら、動画アプリを起動させてプレイリストを開いた。そして、いつものように一つの動画を再生させる。タイトルは『_ _1』。たった三文字の記号と数字で並べられたそれは、検索にかければいとも簡単に他に紛れる、ありふれた羅列だった。
画面にはギターを弾く手元と、白いシャツの肩口に透けて見える、青い二匹の蝶々の刺青。弦を爪弾く動きに合わせて、シャツの生地がかすかに揺れ、蝶々が羽ばたく。アコースティックギターの素朴な音色が、戯れるように同じ音階を行ったり来たりしてから、曲はゆるやかに始まった。それは囁くように歌い上げられる、ロックバラード。吐息を孕ませた歌声が徐々に上擦って、熱を持ったものに変わっていく。
ふと、画面の上部にアッシュブラウンの毛先が垣間見えた。その瞬間、感情の波が鎮まったように、穏やかな声色が戻ってくる。
『鮮烈な色をやさしくするよ、だから』
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