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少年兵は帰還する ①
ロエンがエブランに連れられて領主邸に帰ってきたのは予定していた三日から四日ではなく、十日後だった。
『帰る予定』と言われた日を過ぎた頃からソワソワしていたが、エブランは一向に帰る支度をしなかったため、本当は領兵の見習いすらクビになってしまったのではないかと思い込み始めたほどだった。
「ああ!違う違う!」
「え」
「お前の母親のな」
「母さん……?」
「そう、お前の母さん。と、その生まれ育ったところと、その先祖と……まあ、いろいろ情報がここに届く。それらをここで受け取ってから帰還する。そういう予定だ」
「ふぅん……」
今いちピンときていない様子でロエンは頷いたが、思ったよりも長く孫といられると知った祖父のデンゴーは嬉しそうだった。
ロエンへ挑む者は少なくなったが、代わりに一種の少年団が出来上がっていた。
指導するのは正規の領兵であるエブランで、団長はミエブという少年に任せることにする。
最初はロエンが団長となるべきだと揉めたが、現在はターランド領兵預かりであるとしてエブランはその他薦を拒否した。
集まりはいわゆる悪ガキ軍団だが、さすがに領兵が直々に鍛えれば多少は統率が取れてくる。
「ふむ。やっぱり時間が足りんな……ミエブ、ここら辺を巡回する兵にお前たちをさらに鍛えてもらうように、俺から手配しておこう」
「おう!…じゃない、はっ、はい!」
言葉遣いはまだたどたどしく乱暴さが抜けきらないが、さすがに働きに出るような年齢の子供も多かったため、一応は礼儀を守ろうとする姿勢は好ましい。
こんな子供の集まりであろうとも、体力作りと訓練を重ねれば戦力になる。
王都で澄ましている貴族子爵よりもよほど乱暴に育った市井の子供たちであるから、多少の暴力を経験している者も少なくないため、統率が取れれば臨時の予備兵ぐらいにはなるはずだ。
思わぬ将来性を見つけ、エブランは領主様への報告材料が増えたことを喜んだ。
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