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それから、学校ではいじめが引き起こした自殺として、大きな問題となった。保護者会も立ち上がり、自分たちの権利を行使して学校側に問いただした。しかし、いじめがあったという確固たる証拠もなく、学校側は断固としてそれを否定した。
そんなある日、志季は昼休みの時間、校長室に呼ばれた。
「失礼します」と云って、ドアをノックして中へ入ると……。
誰かの母親らしき人物がソファに座っている。
「あなたね?」
「え?」
「あなたが、智也の自殺を煽って……許さない!」
女は勢いよく立ち上がると志季の胸倉を掴み、手のひらを高く振り上げた。しかし、それを担任教師が止めに入る。
志季は、なぜ、自分が責められているのかが分からなかった。あれが最善の救済策だと思ってしたことなのに……。
「僕は、智也くんを楽にさせてあげただけです」
「許せない! どうしてそんな!」
暴れる女を、必死に担任教師が押さえ込む。
女は憤怒と殺気に満ちていた。涙を流し、洟を垂らし、歯を剥き出し……。こちらを睨みつけ、怒声を上げている。
「あの、叩く相手間違ってますよ。僕には感謝して欲しいです。あなただって彼の苦しみに気づけなかった。それって、どうなんですか? 自分の子供も守れない母親なんていらないと思うんですけど」
気が触れた女は悲鳴に近い声を上げると、力尽きたように床に崩れ落ち、わんわんと噎び泣き出した。
志季はそんな女を冷ややかな目で見下ろし、
(可哀想な人だな)
心で呟き、同時に笑いが零れた。
「もういい。君は下がりなさい」
校長に云われ、志季は一礼をすると、
「まだ話は終わってない! 離してよ!」
女の怒声が校長室に響く。羽交い締めにされながらも、無理やり手を伸ばし、志季を掴もうとする。
しかし、志季は気にせず、その場を後にした。
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