いらないモノ

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 外からも女の泣き声が漏れている。志季はドアに小首を傾げてから、教室まで歩き始めた。  苦しみから解放することが、なぜいけないのだろう……。志季は理解できなかった。  あの女の哀れな姿を思い返して、もう一度、頭を捻る。  教室に戻ると、志季の顔を睨みながらクラスメイトはこぞって囁き合う。避けて通るものもいた。  自殺の一件から皆は志季を遠ざけるようになったのだ。彼らの眼顔はまるでバケモノでも見るかのようである。  自席について、読み進めていた小説を開き、思わずため息を零す。  全くどいつもこいつもおかしい。なぜ、自分が非難されなくてはならないのか。悪いのはいじめた側で、彼らが罰せられるべきなのに。お門違いもいいところだろう。  彼は最後、志季を見て笑っていた。ありがとう、とでも云うように……。  彼が望んでいるのに、それを阻むことの方が酷じゃないか。彼の望み通りにしてやるのが一番いい。それが、命を絶つことであったとしても……。 (僕は間違ってない……)  しかし、志季を肯定するものは誰一人としていなかった。  死ぬことを悲しいこと、いけないとこ。  人間はそういったネガティブな固定観念を捨てるべきなのだ。決して、死は悪いことばかりではないのに。  そうして、志季はページを捲ると、もう一度ため息を落とした。
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