いらないモノ

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    *  その後、葦原詩帆は原因不明の心臓麻痺として片付けられ、その一件は幕を閉じた。  だが、志季にとっては、これは始まりに過ぎなかった。これからは存分にヒトの死を味わうことができる。まさに、究極の贅沢である。  まるで、そう――林檎を(かじ)ると、ジューシーな蜜と旨味が口中に広がり、脳髄(のうずい)に溶け入るかのようで……。  食べた時の頭上から足先まで電撃が走り抜ける感じ。  ああ……昇天しそうだ。  サク……サク……。  ムシャ、ムシャ……。  死の味がする。極上の逸品(いっぴん)。  この先もずっと味わいたい。何度も何度も、咀嚼したい。  ああ、死の味がする。うまい。快感だ。     4  志季は、児童養護施設の自室のベッドの上で本を読んでいた。時間は夜の十一時頃。  施設内はもう就寝時間だ。そんな時に突然、ドアからノックが聞こえた。  珍しい。この部屋を訪れるものは久しく見ていない。  ゆっくりとドアを開けてみると、視界の下に小さな頭が見えた。俯くと、まさかの桃だった。
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