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凍砂は一度、生唾を飲み下し、画面をタップする。
「火浦さん?」
「ああ、さっき連絡をくれたよね。ちょっと手が外せなくて出れなかったんだ。どうかしたかい?」
いつもと変わらない明日馬の声。それを聞いた途端、何だか眼裏から熱いものが込み上げてきた。そして、〝なぜ〟という悔しい気持ちが腹底から気管を通って口の中で膨れ上がった。
「……火浦さん、ちょっと話があります。これから会えませんか?」
「すまないが、今からは無理だ。でも、夜なら時間は作れると思う。ちょっと遅くなるかもだけど大丈夫かい?」
「何時でもいいです」
「じゃあ、二十一時頃にマンション前に行くよ。着いたらまた連絡する」
「はい」
凍砂は通話を切り、ぎゅっとスマホを握りしめた。まだ、息苦しい。鼓動も早い。胸許を抑えて、ベッドに横になる。
正直、今思っていることを彼に問いただすのが怖かった。怖くて、怖くて、たまらなかった。
でも、聞かないと云う選択肢もなかった。ちゃんと明日馬の口から聞かなければならないからだ。〝りさに何をしたのか〟を……。
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