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「そうだ」
凍砂は目を見張る。
やはり、最悪なカードを引いてしまった。
「なんでそんなことを! じゃあ、りさはまだあの時、生きてたってことですか!?」
「いや、りさの心臓はその時点ですでに動いていなかった」
「でも、だからって……どうしてそんな」
「君のためだよ」
彼の大きくて切れ長な眸に見据えられる。
「僕のため?」
「心臓を抉りとっておけば、連続通り魔の犯行だと警察も思うだろ。でも、もしあの場で、りさの片腕が切り裂かれた状態で二人を放置してしまったら、君は警察になんて説明するんだ?」
「…………」
「だから、あの時――」
「でも! そんなのは……」
凍砂は唇に歯を立てる。
「じゃあ、あの時どうするのが正解だったんだ!? 警察に本当のことを伝えたところで、信じてもらえるはずがない。りさはすでに死んでいたんだよ! 君を守るためにはそうするほかなかったんだ!」
りさの顔が脳裏に過り、眼裏が熱くなった。
そうするほかなかった? 確かにあの状況下で、問題を回避するにはそれが一番手っ取り早いかもしれない……でも、だからってりさの心臓を……。
凍砂は瞼を強く瞑った。
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