混沌

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 昼休み、唯人と二人で男子トイレに入ると、慎重に誰もないことを確認してから、 「なあ、前にも云ったが、俺にも何か力になれることはないのか?」  と、唯人。  それに対し、凍砂は小さく頭を振る。 「その、サイコビーストっていうバケモノを、この先も火浦さんと二人で帰していけるのかよ」 「分からない……でも、無謀だとしても、やるしかないんだ」 「もっと凶暴なサイコビーストが現れたらどうするんだ」 「分からないよ。それでもやらないっていう選択肢はないんだ。僕たちが戦わなければ、きっとこの街は終わる。世界だって……」  凍砂は顔を伏せて、目を瞑る。すると、彼に両肩を掴まれ、 「凍砂、こっち見ろ。お前には葉砂さんと同じように人に力を与える能力はないのか?」 「ない……と思う」 「まだ力が眠ってるだけとかじゃないのか?」 「もしそうだとしても、唯人には力を与えないよ」 「なんで!」  唯人の指先が肩にめり込む。 「君を危ない目に合わせたくないからに決まってるだろ」 「別に俺は構わない。知った以上、このまま何もしないでいる方が無理だ。なあ、酷なこと云わないでくれ……。俺も一緒に戦わせてくれよ」 「唯人……」 「親友だろ? 俺にお前を助けさせてくれ」  凍砂は彼の真っ直ぐな視線に耐えかねて、また頭を落とす。 「仲間は多いに越したことはないだろう? 一緒に戦おう。門叶さんと葉砂さんのためにも、この戦いに終止符を打つんだ」
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