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「でも、これ以上誰かの目に入ると大変だ。部長にはどうにか誤魔化して、削除してもらうしかないな」
「うん、今から部長に電話してみる」
「分かった」
凍砂は通話を切り、すぐ、由茉にかけようとしたがしかし、その手を止めた。
きっと、由茉に連絡を入れれば、明日の集会でこの話が持ち上がるだろう。――だが、やむを得ない。学校中に噂が広まるよりはいい。
しかし、この投稿者はどこまで知っているのだろう。〝連続通り魔事件はサイコビーストというバケモノの仕業。久遠凍砂はその事件に関わっている〟この文面を見る限り、かなりの情報を入手しているような気がする。
これ以上、サイコビーストの情報を漏らされたら事態は深刻になる。迅速に対処しなければ……。
ただ、このアカウントをBANしたところで、書き込んだ人間を見つけ出さない限り、鼬ごっこになる可能性がある。相手からしたら、また新たにアカウントを作ればいい話だからだ。
発信者情報開示請求はハードルが高すぎるし、自力でIPアドレスを特定し、相手の身元を調べるのも専門知識がないと無理だ。
(最悪、由茉に頼んで一時的に掲示板を封鎖してもらうしかない……か)
とにかく云い訳を考えて、由茉に連絡をいれよう。話はそれからだ。
次の日、オカ研の集会では案の定、由茉からその話が持ち出された。
「電話でも話したけど、あの情報はデマなのね?」
「……うん」
と、凍砂は頷くしかできなかった。
「そう……でもなんであんなデマを。久遠くんのことを陥れようとでもしてるようじゃない? 心当たりとかないの?」
「うん……」
はあ……と、由茉は小さくため息をついてたら、
「とりあえず、投稿者はBANしたけど、また同じようなことが起きたら一旦掲示板を封鎖するね」
「ありがとう……」
「てか、サイコビーストってなんなのかな。バケモノって云ってたけど、今まで聞いたことないわ。誰か知ってる?」
唯人と凍砂は暗澹として首を振る。しかしそんな中、凌空が喋り出す。
「分かんねえけど、本当にその情報はデマなのか?」
「え、どういうこと?」
由茉は眉をひそめる。
「いや……なんつーか、凍砂って隠し事多そうだし、まだ俺たちに云っないこととかありそうじゃね?」
「隠し事なんて、誰にでもあるんじゃない? なんでそんなこと云うのよ。久遠くんとは友達でしょ? 信じてあげなくてどうすんのさ」
「友達ね……。唯人とはいつも一緒にいるし、友達なんじゃね? でも、俺はどうだか」
それを聞いて、唯人が間に割り込む。
「おい、何云ってんだよ。お前だって友達に決まってるだろ?」
「唯人から云われてもな。本人が黙り込んじまってるし」
「…………」
三人にじっと見られ、凍砂は言葉に詰まる。
(どうしてこんな状況に……)
凌空の様子がいつもと違っていた。どこか不機嫌で、言葉一つ一つに棘があり、怒りが込められているようにも感じた。
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