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「ほら、何も云わねえだろ? 俺は最初から友達と思われてなかったんだよ」
「違うよ!」
凍砂は、すかさず否定する。
「凌空のことも友達だと思ってるよ」
「どうだかな。最近、お前たち二人がこそこそと隠れて一緒にいるの知ってんだぞ」
「そ、それは……」
「だろ? 俺はいつも蚊帳の外ってやつさ」
確かに、唯人とは今まで親交を深めてきた。オカ研に誘ってくれたのも唯人だし、資料室で気絶した時も、彼だけが保健室で自分が目覚めるまで傍にいてくれた。元気がない自分に声をかけ、夢の話も真剣に聞いてくれた。サイコビーストの話だって……。彼はいつも辛い時に傍にいてくれたのだ。
「今回の件だってそうだろ? 真っ先に唯人に連絡入れて、俺には今の今まで知らせもしない。俺だってオカ研の仲間なのによぉ」
「ごめん、そんなつもりはなかったんだ。ただ、大事にしたくなかっただけで……」
「俺に云うと大事になるのか?」
「いや、そういうわけじゃ……」
彼に煽られ、うまく言葉を繋げることができなかった。
そんな当惑する凍砂を見て凌空は鼻を鳴らし、
「まあ、別にどうでもいいけど」
腕を組み、だらしなく椅子に凭れ掛かると、凌空は声の調子を変えて、
「でもさ、その投稿者が云ってたサイコビーストってのがいるとして、そのバケモノを倒したら俺たち英雄になれるんじゃね?」
「え、英雄ってねえ……」
由茉は呆れ顔で肩をすくめる。
「これって、オカ研が正式な部活として認めてもらえるチャンスじゃん」
「まあ、そうかもしれないけど……」
由茉は覇気のない声で答える。
「なんだよ部長。前は強気な発言してたのに、いざとなると怖気付くのな」
「簡単に倒せばとか云うけど、相手はバケモノなのよ? 弱点とかなかったら流石に……。ていうか、この情報はデマだって久遠くんが云ってるじゃない!」
「もしもの話だって。何向きになってんだよ」
凌空はもしもの部分を強調して云う。
するとおりしも、強く卓上を叩く音が資料室に響いた。由茉は前屈みになり、眉を鋭角に吊り上げた。
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