混沌

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「さっきから聞いてればなんなの!? なんでそんな突っかかってくるわけ? 久遠くんのことも疑うし、謝りなさいよ!」 「は? なんで俺が謝らなきゃいけねえんだよ。実際、怪しいだろ。葉砂の死の原因を突き止めるためとか云って、急に転校してきてさ。変な夢の話とか、マジで元々気味悪いやつだと思ってたんだ。なのに、唯人がお節介焼いてオカ研にも入れるとか云い出すし、マジ勘弁って思ってたわ」 「おい! 流石に云い過ぎだぞ! 何イラついてんだ」  唯人は眉間を狭めた。 「イラついて悪いかよ。俺、もうオカ研やめるから。自由に漫画読めるからいいかなって思ってたけど、マジでくだらねえ集まりだって今はっきり分かったわ」  凌空は立ち上がると、鞄を持って出入り口に向かう。 「おい、凌空! 待てって!」 「うるせえ!」  何かが床に落ちる音。見ると、眼鏡だった。  肩を掴む唯人の手を乱暴に振り払った際、ちょうど唯人の顔に肘が当たり眼鏡が床に落ちたのだ。 「いってえ……」  唯人は顔を押さえる。すると、凌空は気まずそうな顔を浮かべ、そのまま資料室を出ていってしまった。 「凌空!」  唯人が背中に声をかけるも、彼は振り返ることはなかった。開け放たれたドアの向こうを唯人は唖然たる面持ちで、見つめていた。 「だ、大丈夫?」  由茉が席を立ち、歩み寄ろうとすると唯人は「大丈夫だ」と云って、床に落ちた眼鏡を拾い上げた。 「本当に、どうしたのかな。榊原(さかきばら)くんがあんな態度とるなんて……」  唯人は眼鏡をかけながら席に着く。 「凍砂、ごめんな。あいつ血が上ると止められないんだよ」 「謝るのは僕の方だ……。二人ともごめん。僕のせいで……」 「きっと大丈夫。榊原くんのことだから、またひょっこり顔出してくるよ」  由茉が優しく慰めてくれるがしかし、その面持ちから滲み出る不安の色は隠しきれていなかった。
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