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ゆっくりと雑誌を捲る紙の音。凌空が居なくなった資料室は重い沈黙に満ちていた。誰一人として、声を発するものはいない。いつもなら漫画を読む凌空のケタケタと笑う声が聞こえてくる頃なのに。
しめやかな時間が過ぎる中、唯人の方を見やると、彼の思い悩んだ顔に心が痛んだ。
やはり、選択を誤った。
サイコビーストのことを打ち明けるべきではなかったと、後悔の念に駆られた。
唯人に頼らなければ、こんな風に凌空とも仲違いにならずにすんだろう。
自分が弱いばっかりに、彼を頼り……そして、打ち明けることで、楽になろうとした勝手すぎる行為。そんな自分が許せなかった。
後悔先に立たずだが、時間が巻き戻せるなら云わない選択を取るだろう。そうすれば、唯人も一緒に戦いたいなどと、自ら身を投げるようなことも云わなかった。
それに、考えたくもない憶測が脳裏を掠めることも……。
もしかしたら、凌空が掲示板に書き込みをしたのではないか――と。
(最悪だ……)
なんども違うと云い聞かすが、考えれば考えるほど凌空の顔が浮かんでくるのだ。そんな自分が嫌だったし、友人を疑ってしまう自分に怒りさえ込み上げてきた。
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