混沌

19/22

32人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
    7  まもなく、オカ研はお開きになり、唯人と一緒に学校を出た。  外は夕闇が静かに訪れていた。空の濃紺色(のうこんしょく)(くれない)のグラデーションにどことなく哀愁を覚え、絵具で塗ったような黒い雲が神秘的に見えた。遠くにあるいくつか並んだクレーンがキリンみたいだ。  二人は、ただ並んで歩いていた。歩幅はいつもよりも狭く、遅い。凍砂は隣で思いつめた唯人の顔を見ていられず、 「唯人、ごめん……」  謝って済むことではないのは分かっている。でも、それ以外の言葉が見つからなかった。 「なんで謝るんだよ」 「俺が唯人のこと巻き込んだから……」 「別に、巻き込まれたとか思ってないから」 「でも、サイコビーストのことだって云わなくてもいいことだったのに、俺が感傷的になって」 「誰だって、凍砂と同じ状況なら辛くもなるさ、一人で抱え込む強さなんて、別に必要ないともうぞ? 甘えられる人がいるなら、素直に甘えるべきだと思う。我慢するから、おかしくなる。自殺する人だって、我慢しすぎた結果だろ?」 「唯人……」  唯人の思いやりが、言葉一つ一つが、心に染みてくる。しかし、その優しさが自分を駄目にする気もした。このままだと、また選択を間違えかねない。彼を危ない目に合わせてしまう。  サイコビーストとの戦いは危険が付きまとう。命をいつ落としてもおかしくない。だから決して、唯人をそんな戦場に連れ出すわけには、いかないのだ。 「もう、そんなに自分を責めるな。あと、俺は本気だからな。お前の力に――」  唯人が云い終わる前に、 「それは駄目だ」 「お前も頑固だな!」 「なんとでも云えよ。僕の気持ちは変わらないから」
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加