混沌

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「危ない目に合わせたくないんだろ? それは俺も同じだ。お前を危ない目に合わせたくない。でも、それが無理っていうなら、せめて守らせてくれよ」  ――守る……。やっぱり自分は守られる側なのか。  ずっとそうだった。失明してから九年間、葉砂や一花の手を貸してもらうことばかりだった。一人じゃできないことばかりで、守られっぱなしだった。光を取り戻してからもそうだ。明日馬やりさに守ってもらわなきゃ、サイコビーストと戦うこともできない……。  仕方ないと云われたらそれまでだが、そんな自分がどうしようもなく情けなくて、恥ずかしくて、悔しくて――だから……もう! 「守られるのはうんざりだ!」   思いがつい、口を衝いた。溜まっていたものがどっと溢れた。 「誰かに守られれば守られるほど、自分の無力さに嫌気がさすんだ! 門叶さんだって僕に力が無いばっかりに、守ってやることができなかった。僕のせいなんだよ。門叶さんが死んだのは!」 「それは違うだろ。お前はなにも悪くない。悪いのはサイコビーストを生み出してるやつだ」 「もう、目の前で誰かが死んでいくのは嫌なんだよ……」  感情を抑え込めない。涙が溢れてくる。頬を伝い、地面に落下する。身体が震えた。情けない嗚咽も漏れてくる。  嫌だ、嫌だ、こんな自分、唯人に見られたくない。 「凍砂……」 「だから……だから……」  その時だった、また激しい眼痛に襲われる。
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