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熱い、痛い、焼けるような痛み。
凍砂は膝から崩れ落ちる。横ざまになり、地面の上で身体を丸めた。
「凍砂! しっかりしろ! おい!」
唯人の声が遠のいていく。
そして、ふっと視界が暗転したかと思うと……。
*
あれ……。
ここはどこだ。
暗くて、肌寒い。湿気の臭いが辺りに充満している。
明かりはないの?
誰かいないの?
目の前にドアが見えてきた。
ここは……。
施錠がかかっている。
倉庫?
中から何か物音がする。
誰かいるの?
ねえ、
聞こえる?
「駄目よ、凍砂。ここに近づいたら」
母さんの声だ。
後ろを振り返ると、一花が暗闇からぬるりと現れた。
ねえ、
ここは?
ドアの向こうには何があるの?
「上に行きなさい」
ねえ、
答えてよ、母さん。
「さあ、早く行くの!」
なんで、怒ってるの?
どうして、ここに近づいたら駄目なの?
どうして?
どうしてなの、母さん。
教えてよ。
どうして……。
どうして…………。
*
そこで現に引き戻され瞼を開けると、目の前に唯人の顔がぼんやりと見えてきた。肩を揺すられ、何度も名前を呼ばれている。
「ゆい……と」
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