混沌

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「大丈夫か!?」 「ああ……」 「また目に痛みが?」 「うん」 「い、凍砂……」  唯人は、なぜか自分を見て驚いた顔をしている。 「目の色が、また濃くなってるぞ……」  凍砂は慌てて、鞄の中から小さな手鏡を取り出す。 (本当だ……)  血の色みたいな深紅。また眼球の奥の方でが蠢き、 「うわっ!」  手鏡を放り投げる。恐怖におののき、頭を抱える。 「嫌だ、もう嫌だ!」 「凍砂、落ち着け!」  暴れる自分の身体を押さえ込んできた唯人の胸許に顔を埋めた。 「怖い、もう嫌だ……」 「分かったから。だから、落ち着くんだ」  その時だった。突然、脳裏に知らない光景が浮かび上がってくる。 (な、なんだこれ)  自分のではないとすぐに分かった。  これは、唯人の記憶?  彼のまだ幼い姿。中学生の頃。初恋の相手。高校に上がり、凌空と初めて会った日のこと。自分への想い。カメラが切り替わるように、映像が脳裏に流れ込んでくる。 (これって……)  心拍が速まっていく。  考えもしなかった能力が、また目覚めてしまったというのか。  貧血のような眩暈が起きた。指の先まで冷たくなっていく。 (もしかして、これも葉砂の力?)
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