32人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
「大丈夫か!?」
「ああ……」
「また目に痛みが?」
「うん」
「い、凍砂……」
唯人は、なぜか自分を見て驚いた顔をしている。
「目の色が、また濃くなってるぞ……」
凍砂は慌てて、鞄の中から小さな手鏡を取り出す。
(本当だ……)
血の色みたいな深紅。また眼球の奥の方で何かが蠢き、
「うわっ!」
手鏡を放り投げる。恐怖におののき、頭を抱える。
「嫌だ、もう嫌だ!」
「凍砂、落ち着け!」
暴れる自分の身体を押さえ込んできた唯人の胸許に顔を埋めた。
「怖い、もう嫌だ……」
「分かったから。だから、落ち着くんだ」
その時だった。突然、脳裏に知らない光景が浮かび上がってくる。
(な、なんだこれ)
自分のものではないとすぐに分かった。
これは、唯人の記憶?
彼のまだ幼い姿。中学生の頃。初恋の相手。高校に上がり、凌空と初めて会った日のこと。自分への想い。カメラが切り替わるように、映像が脳裏に流れ込んでくる。
(これって……)
心拍が速まっていく。
考えもしなかった能力が、また目覚めてしまったというのか。
貧血のような眩暈が起きた。指の先まで冷たくなっていく。
(もしかして、これも葉砂の力?)
最初のコメントを投稿しよう!