蔽われていた過去

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 夕方の六時半ごろに自宅に帰ると、一花が居間にあるソファに座ってテレビを見ていた。  凍砂はただいまと云って、冷蔵庫から飲み物を取ろうとした時だった。 (あれ)  一花が食べると云って残しておいたケーキがまだある。買ってきてからすでに三日は経つというのに。さすがに食べてしまわないと駄目になってしまう。 「母さん?」  テレビを見ている一花に声を投げる。 「ん、どうかした?」 「ねえ、ケーキ。まだ食べないの? さすがに駄目になるよ?」 「ああ、そうよね……後で食べるわ」  一花の華奢な背中に翳が落ちたように見えた。凍砂は冷蔵庫を閉めて、居間に向かう。  やはりこのケーキには何か意味があるのだろうか。
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