蔽われていた過去

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 程なくして救急車が到着し、一花は病院に搬送された。  その後、一命は取り留めたが、大量に薬を呑んでいるため、すぐさま胃の洗浄が必要となった。  一花は心身ともに消耗しきっており、その日は入院を余儀なくされた。  凍砂は病床で目を瞑る青白い一花の顔を見つめながら、あることを考えていた。  もう一度、一花に触れれば彼の正体が分かるかもしれない。彼を閉じ込めていた理由が分かるかもしれない……と。  しかし、差し出した指先が彼女に触れる前で止まった。  怖かったのだ。彼の存在は気になるが、それよりも現実を直視するのを(おそ)れた。もし、記憶を覗き見て一花が彼に虐待していたことが真実だったら……。  凍砂は、あえなく手を引いた。かぶりを振り、深く息を吐き出す。手のひらを握りこみ、目を閉じた。  するとおりしも、同じ病室にいたお爺さんがテレビを見ながら唸り声を上げた。見ると、ニュース番組だった。緊急速報が流れている。  凍砂は歩み寄り、テレビに目を向ける。 「いやはや、恐ろしい。どんどん人が倒れとる」  お爺さんは凍砂の存在に気付いたのか、テレビを見ながらしゃべり始めた。 「戦争を思い出すのぉ……こんな風に人が次々にやられおってな……」  凍砂は、生中継で流れている映像に驚愕した。それは、街中で人々が血しぶきを上げながら次々と倒れていく映像だった。 (サイコビーストだ……)  テレビには映っていなかったが、それは明らかだった。とんでもない凄惨たる光景である。  凍砂はすぐさま病院を出て、明日馬に電話をかけた。
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