蔽われていた過去

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 唯人に襲いかかるサイコビースト。  見えない相手とどうやって戦えるというのだ。完全に無謀だった。やつの鋭い爪が腹部に入り、唯人は悲鳴を上げる。血が飛び散り、そのまま倒れた。 「唯人おお!」  喉を突き抜けるような声とともに、凍砂は手を伸ばす。  と、その時――空から突如として(からす)のように漆黒のローブを身に纏った何者かが、唯人の前に降り立った。  すぐさま、ローブを身に纏った者はサイコビーストを思い切り蹴り飛ばす。 「バケモノ、何をしている。こいつを襲うな。なぜ、ゆうことを聞かない。無駄なモノを襲えと云ってるだろう。まったく……こんなことじゃ、効率よく塵芥を掃除できないな」  そうして、ローブを身に纏った者は唯人の方を向き、 「やれやれ」  呆れたようにため息を零すと屈みこんだ。 「君は勇敢だったよ。無力なのに凍砂を守ろうとした。拍手で(たた)えたい気分だ」  凍砂はそれを聞いた瞬間、息を飲んだ。身体の芯から動揺が襲う。 (なぜ、僕の名前を知ってる……あいつは誰だ)  ローブを身に纏った者はそのまま唯人に口づけをし、凍砂のほうを向く。  フードを目深に被っており、顔は確認できないがしかし、声色的に若い男だということは判別できた。  凍砂は、こちらへゆっくりと歩み寄ってくる顔の見えない男におののいた。
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