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凍砂に覆いかぶさり、やつの恐ろしい唸り声と、ワニのような口が開かれた。ギザギザの幾本もの鋭い歯が目の前で剥き出される。
(光は……光を掴み取れば…………)
だが、なぜかそいつには光がなかった。
(なんで……)
魂が入っていない!?
(そんなことがまさか……)
サイコビーストが大口を開けた。背筋が凍り付く。これで終わりなのか。こいつに喰われて、死ぬのか。と、死を覚悟したとき。
パンッ!
どこかで何かが弾かれるような音が聞こえた。同時に、サイコビーストの頭が吹っ飛ぶ。
上体を起こし、音のした方を見ると血だらけの明日馬の先に、何かを構えて立っている唯人の姿があった。
(ピストル?)
光を放つピストルのようなものを掴んでいる。
「早く、今のうちにサイコビーストを帰すんだ!」
唯人が叫ぶ。
「唯人、お前……」
「早く!」
顔が再生したサイコビーストがまた襲い掛かってきた。
凍砂はギリギリのところで、やつの攻撃を交わすとまた、パン! パン! と何発かの銃声と光る弾丸がサイコビーストの胴体に命中する。苦しそうな喘ぎ声が街に轟く。
――凍砂。今よ……。
また、葉砂の声が身体の内側から聞こえてきた。
視界が光に包まれ――そして、サイコビーストが溶け始める。恐ろしい呻き声を上げながらそのまま跡形もなく消えていった。
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