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葉砂の眦から一筋の涙が零れた。明日馬は我を忘れたように、何かをぶつぶつと吐きながら、指に力を込めていく。
すると、間もなく葉砂の腕がだらんと砂に落ち……。
明日馬は直ちに手を放し、身体を戦慄かせた。自分の手のひらを見つめ、悲鳴を上げると、その場から逃げるように離れた。
そこで場面は切り替わり、今度は明日馬が茫然と歩く姿が見えてきた。しかし、その足は間もなく止まった。
思い直したのか踵を返し、浜辺に引き返す。
すると――。
葉砂がふらつく足取りで歩道を歩いているのが見えた。
――生きてた。
しかし、その直後だった。葉砂の足がもつれ、身体が車道側に倒れ込んでしまう。そして、ちょうど来たトラックとぶつかり、身体が数メートル吹っ飛んだ。
明日馬はその光景を見ながら全身を震わせていた。地面に膝をつき、絶望の色を顔中に広げている。
*
凍砂はゆっくりと首を振り動かす。
「嘘だよ……」
「え?」
すっと明日馬の身体が離れた。
「火浦さんが葉砂を……」
「凍砂くん?」
「お前が、葉砂を殺したのか!」
叫びながら彼の首に掴みかかる。
「な、なんのことだ!」
「全部見たぞ! こうやって、お前が葉砂の首を絞めた! それに、葉砂がトラックに轢かれたのを見ていたのもお前だった。お前が目撃者だった。葉砂は自ら車道に飛び込んだんじゃない。自殺じゃなかったんだ!」
「なんで君が、そ、そのことを知ってるんだ……」
「お前の記憶を見た」
「き、記憶!?」
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