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プロローグ
outside
満開の桜道が出迎える入学式。
数少ない特待生枠を勝ち取った一人の男は、目が回りそうな程煌びやかな講堂で説明を受けていた。
司会を務める中性的な美男のテノールボイスがマイクを通して響く。
「ーーお次は、委員会についてです。」
周りを窺えば、恍惚としたような表情の生徒が過半数。ごく短い時間だがこの学園が少し、異端であることに男は気が付いていた。
壇上に上がる人間を眺めれば、
傍目に見ても美形が多い中で一等絢爛に包まれた男が一人。
濡羽色の髪にアメジストの瞳。
不敵に微笑むその様は何処か妖艶で。
相手は同じ同性なのに、と頭の隅で考えるも全てが吹き飛んでしまうほどに美しい。
ほぼ無意識にじっ、と見つめればふと目があった気がした。
瞬間ーーー、目元を縁取る長い睫毛が揺れる。大人びた顔立ちに反し、意外にお茶目なウィンク。
ドクンッと心臓が高鳴り、顔に熱が溜まる。
普段なら男にされても嬉しくないと一刀両断出来る自信があるのに、それすらもギャップとして可愛いらしいと感じてしまう。彼はもう学園に染まっていた。
いつの間にか順番が周り、男の元にマイクが渡る。
形の良い唇が動き、一言も聞き逃さぬよう会場が一層静けさを増す。
「放送委員会委員長の御影紫乃でーす。仲良くシてね。しんにゅうせー♡」
オトコの情欲を煽るような甘い声。
ニヤリと猫のように嗤う彼はまるで男を掌で転がす悪女の様で。
ゴクリと喉が鳴る。
欲しい。彼が欲しい。その白い喉に噛み付いて、組み敷いて、声が枯れるほど鳴かせてヤりたい。
そう言ったのは誰だったか。
学園生活が始まる。天国の様な生き地獄。
人間の欲が絡み合う楽園へ。
ーーようこそ。
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