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「.......嫌だな。少し話をしただけだよ」
目を細めるようにして上目に睨む。
義兄さんが機嫌の悪い時にやるクセだ。家にいた時はこの人を溺愛する当主の目を気にしてみんな挙って機嫌取りをした。けれど、此処は学園。
家の事情なんて関係ない。
「ははっ、義兄さんそのクセ辞めなよ。見る人が見れば誘ってるようにしか見えないよ」
「はっ、!?」
「何驚いてんの?今更純粋ぶっても無駄でしょ。散々股開いて咥え込んでたのに」
「ーーそれとも、ボクのこと誘ってたの?」
ガツ!!
容赦なく股間を蹴り上げようとした足を間一髪で受け止める。調子に乗りすぎたか、と冷や汗が伝った。
「......ざんねーん、受け止められちゃったかぁ。けど、ちょーっと危なかったよねぇ。鈍ったんじゃないの?」
頬杖をついて流し目を送られる。ボクじゃなければきっと、この色香にやられて一発だったろう。しかし、昔からオトコを唆している処を見ている此方からすると、悪い予感しかしない。
ぐい、とネクタイを引っ張られて顔が近づく。警戒心をマックスにしていれば優しいキスを頬に落とされた。
思わず思考が止まる。いつか見た、女神のように優しい顔で紫乃が笑う。そしてゆっくりと唇が動いてーー、
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