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彼の家からの帰り道。
よく二人で行ったカフェで、心を落ち着かせようと暖かい珈琲を頼んだ。
しかし、そんな必要もないほど私の心は落ち着いていた。
どれくらいで薬は効きはじめるのだろう。
花がひらくと毒が舞うよう仕掛けるなどと、そんなこと出来るわけがない。
不整脈を起こす薬を珈琲にいれたのだ。
これは賭けだ。
彼は死ぬのか、生きるのか。
その後私はどうなるか。
いや、そんなこともうどうでも良いくらいに今はとても穏やかで静かで幸せに満ちている。
テーブルに運ばれた珈琲を一口飲むと、私の中の汚くて黒い何かが綺麗に押し流される感覚を味わった。
何ともいえない震えが全身を包む。
窓から射し込む日差しがとても心地好くて、私は思わず微笑んだ。
ーーひらいたのは、女の嫉妬の花。
男が浮気をするたびに女は嫉妬のつぼみを心にためた。
一輪、また一輪と彼女の嫉妬の花はふえていった。
そしてその花が抱えきれないほどになり、とても大きな花束となったとき、つぼみだった花が一斉に咲いた。
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