何握りましょ

「一方的な片思いですから。しかも、奥さんは人妻ときてる。儚い恋ですわ」
「――っ、ひょっとして、うちの旦那の顔を知ってるって……そういうこと？！」
「こいはこいでも、鯉じゃない。鯉の活造りならぬ、恋の生け捕りですよ」
「こ、このストーカー野郎！」
「いや、あっしはストーカーじゃなく、握るのが仕事でして。それに」
「何よ、この犯罪者！」
「この町の権力を握れば、旦那さんに負けないほどの大金も、握れますよ」
「……」
「その時、あなたに隣にいて欲しいんですけどね」
「……」
「色んなものを握っても、鯉の主導権は、奥さんが握ってますよ。おっと、鯉じゃなくて、恋の、ですけどね」
「……お勘定、お願いします……」
「あいよ、おあいそ！」
「……お愛想。あなたとだったら、尽かさないのかしらね……？」
「え？！」
「分かった。あなたと、握るわ」
「――奥さん、それは」
「手を、握るわ。あなたと」

（くだらなすぎるので）終🍣