何握りましょ

「はい、お待ち！」
「もぐもぐ。……うん、美味しい。味は確かだわ」
「いやあ、ね。お宅の旦那さん、珍しく昨晩うちの店にいらしたんすわ」
「急にぶっこむな！　――って、嘘？！　昨日は残業だって深夜に帰ってきたのに」
「いやぁ、特上注文して偉くご機嫌でしたねぇ。隣に、若い女性、連れてましたよ」
「はぁああ？！？！　な、何それ！」
「えらくご執心でしたよ。顔赤くしてデレデレして、若いお嬢さんに、グッと、こう」
「……心を、握られちゃってたのね」
「で、上機嫌に言いふらしてましたよ。競馬で勝って、握ったと」
「浮気して、しかも……大金握ってるってこと？」
「この耳で握ったんで」
「うん、それは挟むね。てか、さっきのは、心を掴む、ね。訂正……って！　冷静につっこんでる場合じゃない！！！」
「ははは、奥さん。サビ効かせますね」
「……」