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「大丈夫」
全部話し終わると、Kは力強くそう言った。
「俺はお前の姉ちゃんのこと知らないし、そんな風には見てない。お前はお前だよ」
わたしはまばたきをしてこみあげてこようとするものをこらえた。Kの言葉はまっすぐにわたしの胸の中の一番柔らかいところに刺さっていた。
わたしはずっとその言葉だけがずっと聞きたかったのだ。
けれども誰も言ってはくれなかった。祖母も、お父さんも、保健の先生も、誰も。
「なあ、俺思ったんだけどさ」
Kが庭の暗闇を見つめながらふと話しだした。その声は張り詰めて震えている。「なに?」と問うと、おそるおそるといったようにKはその続きを口にした。
「同じ高校行かね?」
「え?」
「いや、そしたら俺、お前のことかばえるし。もちろん俺が勉強頑張って高校のレベル合わせるし。同じ高校行ったら絶対楽しいと思うんだよ」
わたしはそのKの声の震えが緊張からくるものだと気づいた。Kはわたしに断られるかもしれないと思っているのだろう。それでもこれを言うためだけにわざわざ会いに来てくれたのかもしれない。
Kのそのいじらしさが愛おしい。
愛おしいからこそ、胸が苦しくなる。
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