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「えっ」
わたしが言いかけると、 Kは唇の前に人差し指を当てて「しーっ」というポーズをする。わたしは慌てて口をおさえる。
「どうして? どうしてここに?」
わたしは小さな声で問いかけた。
「会いたかったから」
Kも小さな声で答えた。
Kが縁側に座って隣をぽんぽんと叩く。わたしは少し迷ってから彼の隣に腰掛けた。
一月の真夜中は寒く、足先が痺れるように冷たかったが心は温かい。
Kのことを考えていたらKが来た。まるで奇跡みたいだ。
「寒くない?」
Kがもこもこのダウンジャケットを脱いでわたしの膝にかけてくれる。
「今日学校来てたんだ。保健室で会ってすげーびっくりした」
「うんそうなの。わたしも、会えてびっくりした」
「で、昼間は聞けなかったけど、何かあったのか?」
わたしはKに問われるがままに昼間のことを話した。
担任教師が来て姉の小説を置いていったこと、それを読んで文芸部に自分の居場所を持っていた姉が羨ましくなったこと、みんながわたしを優れた姉の妹としか見ていないことが心底腹立たしかったこと。それから、姉に対する積年の恨み。何もかも洗いざらい打ち明けた。
Kは口をはさまず、それに対してずっと優しい相槌を打ち続けてくれた。
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